とっても大切なことに気付かないでいた

 それは、講演(三回)が終わった後の質問コーナーでのことなんですけどね。
 僕は、「いまゲイ≒MSM*1の間でセックスの際にドラッグ(覚せい剤、MDMAなど)を使用する人が増えていること」についてパネラーの皆さんのご意見をお尋ねしました。


 すると、北丸さんが『拘置所のタンポポ 薬物依存 再起への道』(近藤 恒夫著・双葉社・2009年)という、この12月に出版されたばかりの本を紹介して下さいました。

 著者の近藤さんは、自らも薬物依存者であり、しかし今は「日本ダルク」(薬物依存者の"再起"をサポートするNPO;日本全国に支部あり;詳しくはググるとかして調べてねすぐ出て来るから)の代表として尽力なさっている方です。


 で、北丸さんが「この本の帯には、のりピー、うちにおいでよ』と書かれています」と話された瞬間、聴衆の間から軽い笑いが漏れました。僕も笑ったと思います。ズッコけたというか。

 その「笑い」について、張クンが「そこは笑うところではないと思うんですが」とすかさず突っ込みを入れて来ました。かいつまんで言うと、「そこで『笑う』ことは、薬物依存者を自分とは関係無い『赤の他人』として切り捨てていることなんだ」ということです。

これは「日本は『自分(身内)』と『赤の他人』と『客』の社会である」という北丸さんの講演内容をふまえてのことなのですが、その件についてはまた後ほど書きます。

 その張クンの指摘に、僕はハッとしました。
 そして、笑って(ズッコけて)しまった自分がたまらなく恥ずかしくなりました。


 これがもし、同性愛者についての本だったら僕はどう思うでしょう。
 「マッキー、うちにおいでよ」とか。
 …あ、ごめん。それは僕は笑うわ。内輪ネタとして。たとえを間違えた(^_^;


 もとい、これが人種差別についての本だったら?
 「マイケル、うちにおいでよ」とか。


 あるいは、セックスワーカー差別についての本だったら?
 「***(具体名が出て来ない)、うちにおいでよ」とか。


 それは笑わんわな。絶対。
 なのに薬物依存者のことを笑ってしまう自分。つまり薬物依存者は自分と関係ないと思っている自分。(薬物依存の友達がいるのにもかかわらず!!!)


 やっぱり、僕はまだまだアフォやなあと思い知らされました。
 でも、それに気付くことが出来て良かった。
 やっぱ現場で頑張ってる人の言葉は切れと重みがあるわ、張クン。ワタシマケマシタワ…って別に勝ち負けの問題じゃないけど。っていうか張クンと勝負して勝てることなんて多分ないんですけど。


 そんな収穫がありました、というご報告にて、今夜は失礼します。
 

拘置所のタンポポ 薬物依存 再起への道

拘置所のタンポポ 薬物依存 再起への道

*1:「Men who have Sex with Men」;HIVの疫学用語。「男とセックスする男」を指します。そういう人がみんな「ゲイ」や「バイセクシュアル」というアイデンティティを引き受けているわけではないから。「喰われノンケ」もいるし