3.初めてのゲイバー(レズビアンバー)体験 - [同性が好きかもしれないキミへ]

 私が初めてゲイバーに行ったのは、大学生だったとき、当時住んでいた某地方都市でのことです。それ以前から自分の住んでいる町にゲイバーがあることは知ってはいたのですが、どんな場所かよく判らなくてちょっと怖かったことがあります。特に、どのくらいお金がかかるんだろうかということですね。何せ貧乏学生だったので、居酒屋以外のところで飲んだことがなかったんです。後でゲイバーというのは安く飲めるところだと分かるんですけどね。それが初めて行く気になったのは、当事の私の数少ないゲイ友の一人が「奢るから行ってみよう」と誘ってくれたからです。
 そのバーはカウンターだけで10人も座れるかどうかという狭いお店でした。初めて入った印象は、いかんせん20年近くも前の話なので薄れてしまっていますが、ドアを開けたとたんに飛んでくるほかのお客さんの品定めの視線と、「ここにいる人がみんなゲイなのかぁ」という感慨でしょうか。マスターは(今思えば)昔堅気の世話焼きな人で、気さくに話しかけてくれました。それに一緒に行った友だちが常連だったこともあって、話も盛り上がって楽しく飲めたことを覚えています。根がお調子者の私はさんざん飲んで気持ちよく酔っ払ってしまいました。やがて友だちが先に帰ったあともまだ残って飲んでいると、隣の席に座ったお客さんが「一杯奢るよ」というのでありがたく頂いて、それをきっかけに話し込みました。で、そのあと二人でお店を出てから近所のホテルへ・・・。デビューにしてめでたく売れたわけです。


 そんなラッキーなことはその後めったにあるものではなくて、今では私がゲイバーに行く目的は単に酒と会話を楽しむためになりました。変に色気期待で行くよりも、そうやって楽しく飲むことだけを目的にした方が疲れないですみますから。でも最初にそういう経験があるので、今でも心のどこかに「売れるかも?」という期待とトキメキがあるような気がします。三つ子の魂百までと言いましょうか。


 ところで私がデビューしたそのゲイバーには、その後も「二匹目のどぜう」狙いで時々ですが通うようになりました。当然ながら毎回売れるわけでもないのですが、どうせ行ったからには(金を払って飲むからには)楽しまなきゃ損だというのが私の身上だったので、イケるイケないに関わらず隣に座ったお客さんとはできる限り話をするようにしていました。すると、あるときマスターからこういう忠告を受けました。「アンタ、その気が無い相手にそんなに親しげに話するもんじゃないわよ。勘違いされるでしょ」
 そのときはそんなもんかなぁと思いましたが、でも、隣に座る客が必ずしも自分のタイプというわけではないし、黙って一人酒を飲んでるなんてツマラナイことこの上ないわけで。そのうちそのお店からは自然と足が遠のいていきました。
 今ではもうそんな忠告なんてどこへやら。相手がタイプだろうがタイプでなかろうが、話す機会があれば遠慮なく話すようにしています。やっぱりその方が楽しいですもんねえ。ていうかそんな私に目出度く「勘違い」してくれるような人が滅多にいないってことだったりして。とほほ。