親族へのカミングアウト体験

 ぼせさんの[同性が好きかもしれないキミへ]プロジェクトの第5回目のお題です。私の場合、正確には「カミングアウト『未』経験」となりますけれど。


 両親とは私が成人してからはずっと離れて暮らしていましたし、家族とは言ってももともとそんなに親しい関係ではなかったので、結婚やらカミングアウトの問題を切実に考えることもないままでいるうちに、2年ほど前に二人とも相次いで死んでしまいました。それで、これでもうカミングアウトについてあれこれ悩む必要がなくなったと思ってホっとしました。やっと自由になれたというのが正直な気持ちです。ちなみに、カミングアウトには年齢がある程度関係してくるかもと思ったのでデータを公開しておきますと、両親が亡くなったときの年齢は父か73歳、母が82歳、私は38歳でした。両親はともに戦前の生まれで高等教育は受けていなくて、田舎の狭い人間関係の中だけで「ひとなみであること」をほぼ唯一の価値観として暮らしてきた人たちなので、もしもカミングアウトするつもりだったとしたら「ゲイ」とか「同性愛」という概念を・・・そういう概念があるのだということそのものを・・・教えなければならなかっただろうし、相当な時間とエネルギーが必要だったんじゃないかと思います。
 さて私には6つ違いの姉が一人いて、彼女は実家の近くに嫁いでいるのですが、その姉へのカミングアウト問題は残っていますが、その姉とも、特に仲が悪いというわけでも良いというわけでもありません。やはり離れて暮らしているということもあって、あえてカミングアウトする必要は感じていません。
 たとえば姉がすごいおせっかいな人で私に見合い話をどんどん持ってくるようなことでもあれば、それをきっかけに話をする気にもなるかも知れませんが、実際にはそういうこともありません。それに姉は大家族の長男の嫁で、そっちの家族(舅や姑)やら親族の人間関係だけでもう十分に大変らしいので、そこへ加えて私のカミングアウトなどという余計な心労はかけたくないということもあります。だから何かきっかけが無い限りは、このまま何も言わずに過ごしていくことになりそうです。親戚の間での私のポジションは「まともな仕事に就いてない=甲斐性の無い=嫁のもらえない情けない男子」ということになっていますので、まぁそのまま通しておけば良いわけですしね。


 ただ今後もし姉に対してカミングアウトするとしたら、一番ありそうなシチュエーションは、たとえば二人とも歳をとってきてから、何かの折に二人きりで話す機会があり、そこでもしも「あんた結婚もしないでこれからどうすんの」みたいな話の流れにでもなれば、「実はゲイなんだよ」ということになるかも知れないなとは思っています。あるいは私に恋人ができて、もしも(万が一)姉や親戚にもその関係を認めてもらいたいなんていう気持ちになったとしたら、パートナー紹介という形でのカミングアウトもありかも知れません。でもその時までは、自分からはあえて何もしないつもりです。