ミナミのイタリア料理店

 土曜日の夕方、晩御飯の用意をしていたら、Aさんから携帯に電話がかかってきました。「いま天王寺なんですけど、もし良かったらこれから一緒にご飯でもどうです?」



 Aさんからは一ヶ月か二ヶ月に一回くらいのペースで、こういうお誘いの電話がかかって来ます。もちろん、僕の方から「お元気ですか?」的な電話をしたときに、Aさんがお忙しくなければ「じゃあご飯でも」とか「飲みに行きましょか」とお誘いを受けることもしばしばです。

 そういう時、Aさんは絶対に僕にお金を払わせようとしません。
 ご飯も飲み代も、全額Aさんのおごりです。
 それはAさんが僕の万年金欠をご存知だからということもありますが(苦笑)、それに加えて、今から20年近く前、Aさんと初めて知り合った頃に僕が示したほんのちょっとした「好意」を、Aさんが今でも覚えてらして、「あの時は本当に有難かった」からだとAさんは仰います。
 が、その話はまた後ほど…。


 Aさんは現在60代前半。数年前に会社を定年退職して、大阪市郊外の某市で悠々自適の一人暮らし。すごく男前、という訳では決して無いのですが、清潔感があってとても優しい、可愛い(と20近くも年下の僕が言うのも何ですが)方です。

 服装も、年配でそれなりのお金のある大オネエ様方にありがちな「この歳でその服か!」(良い意味でのビックリ)な感じではなく、ユニクロとかイトーヨーカドーとか、そういう量販店の服を小奇麗に着こなす人。それがまた純朴な感じなので、老け専の人にはきっとモテるんだろうなーと思いますが、ご本人は「いやー、全然モテないんですよ」とご謙遜を仰います。
 男の趣味は(昔話を聞く限り)若い子が好きらしいのですが、たとえばゲイバーに行っても、他のお客さんやお店の子にオヤジ的な色コキを使うなんてことは絶対にしない人で、いつもニコニコしながら美味しそうにお酒を飲む人です。

 会社員時代は商社の営業マンだった方なので、取引先の接待に使うために、大阪のキタでもミナミでも、美味しい食事のお店や飲み屋さんの膨大な情報を持ち合わせていらっしゃいます。まるで、「人間グルメナビ」


 で、昨日は難波の新歌舞伎座の近くで待ち合わせました。
 会うなり早速Aさんの「グルメナビ」がフル稼働。「何が食べたい? この辺だったらイタリアンか、しゃぶしゃぶか、お鍋の美味しい店もあるし、中華でも和食でもいいよ。」
 ここで僕はいつも迷ってしまいます。だって選択肢多すぎ!ww
 しばらく迷った挙句、最近イタリアンって食べてないなと思ったので、「じゃあイタリアンにしましょう」と答えました。


 御堂筋線難波駅から徒歩約5分。
 御堂筋から少し狭い路地に入ったところにそのお店はありました。(お店の名前は失念してしまいました!失敗…)
 年季を感じさせる木のドアを開けてみると、カウンターだけの小さなお店です。全部で10人座れるかどうか。週末で、時間も既に8時になっていたので当然満席だったのですが、タイミング良くカップルでお帰りになるお客さんが席を立たれたところで、お店の人に「片付けをしますので、申し訳ありませんがしばらくお待ち下さい。」と言われ、お店の前で待つことしばし。

 5分ほどで「お待たせしました」と笑顔で迎え入れられました。店内は人いきれと厨房(カウンターの内側)の熱気でムンムン。咄嗟に壁に貼ってあるメニューに目を走らせ、料理と値段をチェックすると、結構本格的なイタリアン料理店のようです。とは言えミナミの繁華街でこの値段なら、特に高級というわけでもなさそう。
 スタッフは、厨房で調理をしている男性シェフが二人と、オーダーを取ったりお客さんのお出迎え・お見送りをする女性が一人。カウンターに並んでいる他のお客さんとシェフの会話を聞いていると、どうやらここは「お馴染みさん」率が高いと見ました。


 席に着いて、まずはワインを注文。メニューには3000円〜1万円のワインリストが入っていましたが、いきなり二人でボトル一本を開けるわけにもいかないのでw、グラスワイン(フランス・ブルゴーニュ産の白)を頼んで、まずは「お久しぶりです〜」の乾杯^^

 いつものごとく「料理は好きなものを選んでね」とAさんは仰るのですが、僕も別にグルメな人ではないし、一応奢ってもらう立場としてはそれほど高価なものは悪いなぁと遠慮もあるので、Aさんの好みも聞きながらあれこれと思案して、「魚のカルパッチョ」「グリーンサラダ」「ゴルゴンゾーラペンネ」「シーフードピザ」にしました。

 出てきたお料理は全部美味しかったです〜♪
 量も、一品を二人でシェアして食べるとちょうどいい感じ。
 僕らも色々な話題に花を咲かせながら食べるので、それに合わせてタイミング良く料理が出されるのも好印象でした。
 ペンネとピザにはたっぷりとチーズが使ってあったので、お腹も満足。特にペンネに使ってあったゴルゴンゾーラは、僕が今まで食べた中でも一番美味しかったです。



 途中で二人ともトイレに立ったのですが、小さな(多分木造で古い)建物なのに、トイレはしっかりウォシュレットで、しかもオートマチックに水が流れるものでした。
 トイレってやっぱりお店の印象を左右しますよねー。

 さんざん喋って食べて、気が付けば2時間近くも居座ってしまいました。でも、僕らより先に来てて、僕らが帰るときにもまだ残っているお客さんがけっこういらしたので、やはりこの店は「常連さん」が友人や同僚、あるいは恋人とゆっくり美味しい食事&お喋りを楽しむ系なんだなーと思います。でも別に一見のお客さんでも気持ちよく迎えてくれそう(^_-)