マルのプロフィール(2):成長期

 (第一話は http://d.hatena.ne.jp/shigeri/20091210
 マルが生後三ヶ月を過ぎた頃、獣医に行って予防接種のワクチンを受けさせました。
 その後で、僕が休みの日にちょっとずつ家の外で遊ばせるようになりました。


 最初は家の前庭(と言っても、物干しと自転車置き場に使っている、3坪ほどの「空き地」です)で日光浴。でもそこは子猫の好奇心で、庭の雑草やそこにいる虫(小さなバッタとか)で遊んだあとは、すぐに探検を始めるようになりました。
 まずは、建物とその周囲を囲っているブロック塀の隙間(幅20センチほど)の間にズンズンと突入。
 人間に入れる隙間ではないので、僕はその隙間の先の裏庭(大家さんの家の庭に続いています)に先回りしてお出迎え。で、再び前庭に連れて行く…ということを何回も繰り返しました。


 ブロック塀は高さが160センチはあるので、子猫のマルにはまだジャンプして上ることはできません。
 でも、裏庭から大家さんの庭には、境界線としてブロックが一段並べてあるだけです。しかも大家さんの庭はとても広くて、家庭菜園/果樹園になっているので、マルには格好の遊び場と思えたようです。そのうちに、その庭を探検したり、果樹に登って遊ぶようになりました。
 しばらくは僕もその様子を見ていたのですが、安全な遊び場なので(とりあえず車は来ませんしね)、僕が留守のときにも遊びに出られるようにトイレの窓を少し開けておいてやって、そこから自由に出入りできるようにしてやりました。
 で、万が一迷子になってはいけないので、鈴と名札付きの首輪を買って来て、名札の表に「マル」という名前を、裏面に僕の苗字と家の電話番号を書いておいて着けてあげました。


 それまで家の中に閉じ込めていたときは、僕が仕事に出かける際に、窓のレースのカーテンによじ登りながら「行かないでー! 行かないでー!」と鳴きわめいていたマルにゃんも、それ以来は僕の出勤と一緒に家の外に出て僕を見送って、それから外でひとり遊ぶ(多分)ようになったようです。
 最初のうちは、僕が仕事を終えて帰宅するときに「大丈夫かな? ちゃんと家に帰れているかな?」と心配していたものですが、毎晩家の中から「おかえりニャ〜」と出迎えてくれるので、そのうちそういう心配もしなくなりました。


 そうこうしているうちに、あっという間に数ヶ月が過ぎました。
 子猫の成長って早いんですよねー。
 身体はどんどん大きくなるし、運動能力もメキメキと発達。特に、ジャンプ力は「さすが猫!」。直接高いブロック塀の上には上がれなくても、裏の大家さんの庭の果樹を伝って塀の上に上るようになりました。その塀は、僕の入居していた借家と大家さんの家(農家なので、家も庭もとても広い)をグルっと囲んでいるんです。ですから、その塀の上づたいに歩いて行けば、かなり遠くまで「探検」できるわけです。


 ある日、隣の家(歯医者さんでした)から回覧板が回って来た際に、そこの奥様(60代くらい)が「お宅のマルちゃん、可愛いわねえ。いつもうちの窓の前でお座りして待ってるのよ。煮干をあげたら喜んで食べてるの。」と。
 あららら、いつの間にかよそのお宅でおやつを貰うまでになったのねw
 その頃から、時々ですが「お宅の猫ちゃんが、家に来てるんですけど」という電話がかかって来るようになりました。そんな時は「あー、すみません。自分で帰って来れますから、放っておいて下さい」と答えてました。歯医者さんだけでなく、色んなお宅に遊びに行ってるみたい。ちゃっかりしてるなあ。
 でもお蔭さまで、回覧板やら町内会の集金くらいしか接点が無かったご近所さんとも、「マルねた」でお話ができるようになりました^^


 生後半年くらいになると、もう果樹伝いでなくてもブロック塀の上までジャンプ!して上れるようになりました。野生の運動能力って凄いなー。そこから家の屋根に上って日向ぼっこをしている姿も何度か見かけました。

 さて、パート1でも書いたように、最初のマルの食事は「猫缶」でした。
 でも猫缶は割高だし、空き缶ゴミは大量に出るし、栄養も偏るし、特に夏場に食べ残しを放っておくといたんでしまいそうで心配なので、外出を始める頃にドライフードに変えることにしました。
 最初はなかなか食べようとしなかったマルですが、僕はやるからには徹底してやる方なので(躾けは厳しいんです)、どんなにねだられてもドライフードしかあげないようにしたら、そのうち(しぶしぶでしょうが)食べるようになりました。
 お蔭で夏でも安心して外出することができるようになりました。


 その頃から、困った事が起き始めました。
 外で遊んで来るのは良いのですが、マルは(他の猫ちゃんもそうらしいですが)よく「お持ち帰り」をするんです。裏庭〜大家さんの庭には様々な小動物がいます。そいつらを『生きたまま』家に持って帰って、部屋の中で捕まえたり放したりして遊ぶんですよー。
 犠牲になった生き物は、まず一番多かったのは「ヤモリ」や「トカゲ」。大掃除で普段動かさない家具を動かして裏を掃除しようとしたら、そこにカラカラに乾いたヤモリが…なんてことは日常茶飯事。他にも「バッタ」「カマキリ」「セミ」「スズメ」、そして極め付きは「ネズミ」(キャー!)。
 さすがにスズメとネズミのときは、部屋の中で惨殺されては血まみれになってたまらないので、いやいやながらもまだ元気なうちに取り上げて、外に逃がしてやりました。


 でもねー、一回イヤーなことがありまして。
 真夜中、僕が寝ていると、「ガリッ! ガリリッ!」と音がして目が覚めました。なんじゃらほい? と思って灯かりを点けてみると、なんと…マルがネズミの頭蓋骨を齧っている音だったんです!!!(*o*)
 畳の上には点々と血が。そして、既にネズミの身体はほとんど残っていません。
 あー、食べちゃったんだ…イヤァァァァァァッ!(>_<)
 もーあんた、そんなもんで栄養補給しなくてもいいの!
 (でも『穀物を荒らすネズミを退治する』という、猫を飼う原初の目的としては優秀な猫ですわね。)


 それとほぼ時を同じくして、マルは家に置いてある猫トイレで用を足さなくなりました。どうやら、外でする方が気持ちいいらしいんですね。近所のお家に迷惑をかけてないかしら…特に大家さんの庭で用を足している可能性が大なので、大丈夫かなと心配になりましたけど、大家さんに家賃を払いに行くときに(銀行振り込みではなく、現金払いだったんです)、「うちの猫がご迷惑をかけてませんか?」と訊いてみたら、「別になんもしとりゃーせんよ」というお返事だったので一安心。
 ま、大家さんの庭はとにかく広いし、よその家の飼い猫や野良猫も利用しているようなので、一匹くらい来る猫が増えてもどうってことないんでしょうね。
 でも、どんなに寒くても(まれですが、岡山でも雪が積もることがあります)、雨が降ってても、わざわざ外に行って用を足すマル。どんだけ家の猫砂が嫌いやねん。


 ところで、マルを家に迎える一ヶ月ほど前に、近所に住んでいる友達(徒歩5分ほど)の家でも猫を飼い始めていたので、僕は時々マルをバスケットに入れてそこの猫ちゃんと遊ばせに行くようになりました。
 子猫同士なので、初対面のときからもう夢中で遊んでましたねー^^
 二人(二匹)して外にも遊びに出るので、時々は僕がもう帰宅しなくちゃいけない時間になっても帰って来ないこともあって、そんな時は様子を見に外に探しに行ったりもしました。


 子猫たちを探して夜の細い路地を歩いていると「チリチリチリ♪」とマルの鈴の音が近づいてきて、やがて二匹の子猫が姿を現します。そのまま路地を向こうへと走っていく後姿に「マル!」と声をかけると、二匹は「なぁに?」という風に振り返るんですよ。
 その「なぁに?」の顔が、僕の脳裏に鮮明に焼きついています。
 マルにゃんの子ども時代の幸せな思い出。

 今でも時々、あの頃にもう一度戻ってみたいなと思うんですよね。


 ところがその友達の猫「コトちゃん」(♂)が生後半年を過ぎた頃、やはり♂だからでしょうか、放浪癖が出始めまして。何日も家に帰らないということが続くようになりました。
 何度かその友達に頼まれて「コトちゃん」を探して歩いたことがあります。当時僕が住んでいたのは、岡山の中心部に近いながらも昔ながらの家並みが残っているところで、細い(車も走れない)路地がいくつもある町でした。あるときまたコトちゃんが失踪したので、そんな路地にあちこち入っていって「コト!」と呼んでいると、自転車屋さんの前の古タイヤやオンボロ自転車が積み上げてある中から「にゃ〜」と返事がありました。ああ、こんなところにいた! でもそこは友達の家からは直線距離で100メートルもないところなのに…(^_^;
 早速コトちゃんを抱き上げて、家に連れ帰ってやりました。


 でも、最終的にはコトちゃんは本当に行方不明になってしまいました。
 マルの遊び相手がいなくなったというのもあって、淋しかったです。


 何より困ったのは、マルが家に来て以来、遊び相手の猫はコトちゃんしかいなかったことです。庭付きの家が多く立ち並ぶ、細い路地の多い町なので、それなりによその家の猫や野良猫はいたんですが、マルは他の猫とはあまりうまく付き合えないみたいなんです。
 特にうちの近所のボス猫(多分野良だと思われる)はゴッツイ顔と身体の雄のトラ猫で、こいつがマルをいじめるんですよ。マルの方も、まだ成人しきってないし、身体も小さいオンナノコのくせして、闘争心だけは一人前にあるんです。トラ猫に出くわしたらすぐに逃げて帰ればよいものを、「売られた喧嘩は買うわよっ!」ってな感じで果敢に向かって行くんです。
 もちろん、そいつ相手に勝てるわけがありません。
 結局は「ウギャーーーーー!」とひとしきり対戦した挙句、尻尾の毛をポワポワに逆立てたまま家に帰って来ることになります。
 なんどか日中にその対戦を目撃しましたが、やはり一方的にヤられてばかり。マルは防戦どころか、最後にはビビって放尿&脱糞してました(^_^;


 それがトラウマになっているせいだと思いますけど、今でもマルは他の猫が怖いです。
 予防注射や去年の病気などで獣医に連れて行っても、他の動物の気配がするだけでバスケットの中で固まって、低く「ナーーーーー!」と戦闘(&ビビリ)モードの声で鳴くばかり。大阪に来てからも、友達のマンション(猫が二匹いた)に連れて行ってみたら、やはり同じでした(苦笑)


 その後、例のボス猫はいつの間にかいなくなって(死んだか、よそへ遠征に出かけて帰って来なくなったんでしょう)、それからはマルが他の猫と喧嘩することはほとんど無くなりましたが、それでも外で他の猫たちの喧嘩の声が聞えると「アタシの出番だわっ!」…と思っているのかどうか、ダダダッと外に出てその様子を見に行く習性がついてしまいました。
 どうせ喧嘩は弱いんだから、大人しく引っ込んでりゃいいのに。
 弱っちくてビビリのくせして、変に闘争心だけはあるお転婆猫。トホホ。
 
 (「チュー☆」)


 さて、今回はこれまで。
 次回は『大人の仲間入り〜妊娠・出産編』を書くつもりです。
 いつになるかな?(^_^;