猛吹雪。あっけなく幕切れ。その二。

 2時半頃、ウトウトしていると、20分ほど前に痰の吸引をしたばかりなのにまた看護士さんがやって来た。しかも二人、小走りで。「どうしたんですか」と尋ねると、「息が止まってます」と。父の心電図はナースセンターでモニターしているので(病室ではわからない)、その異常を見て駆けつけたらしかった。

 まさか、と思って見てみると確かに息をしていない。
 「脈もありませんね」・・・・はあ? あまりのあっけなさに、姉と二人ただポカーンとするばかり。人が死ぬって、こんなもんなの??

 その後は、駆けつけた親族に状況を説明したり、家につれて帰るための準備で自宅と病院を行き来したりで慌しく過ごして朝になった。夜明け後に隣保の人たちに報告し、葬儀の準備をお願いした。そんで、打ち合わせをして、当座の必要分を銀行から下ろして張り場に渡して、葬儀屋さんが来て、お寺さんが来て、入棺して、お寺さんが来て、間であちこちから電話が来て・・・・
 今は30日の午前1時過ぎ。階下の控え室では姉と従姉妹夫婦がコタツに入って休んでる。これから朝まで蝋燭と線香を絶やさないように寝たり起きたりしながら葬儀の朝を迎える。

 そんで、父の死の実感は、今になってもあるような、無いような。

 ただ悲しくは無い。まったく。
 これで、母はまだ存命中だけど「母」としての実体は既に失っているから、僕は実質「親なし子」になったわけ。やっと待ちに待った日が来たという感じ。積年の重荷が消えたような開放感すらある。不謹慎? しかたない。いくら家族だって、嫌いな人は嫌いなんだから。母のことは好きだけど、だからこその不条理な重圧ってのもあるからね。
 葬儀はきちんとする。父は嫌いだけど、父の姉妹兄弟は好きだもん。葬式は、あの人たちのためにするんだ。

 でも、最後の最後が静かだったこと・・・・おそらく長くは苦しまなかったことだけは、良かったねと素直に思う。綺麗で穏やかな死に顔だもの。ねえ、お父ちゃん? どのみちもう十分痛かったり悔しかったりしたでしょ。
 だからさ、よりによってこのメッチャクソ寒い(ここまでの寒さと吹雪は何年ぶりだって!)日に逝っちゃったってことも、明日の葬儀もクソ寒い中耐えなくちゃいけないことも含めて、今までの恨みはチャラにしてあげるよ。
 ありがとう。