大阪〜デトロイト〜ニューヨーク。

shigeri2003-06-23

 朝起きたら、家の人は全員出勤した後だった。Yが朝食を作って置いといてくれたので有難くいただく。こうやって快適な「日本」の環境に身を置いていると、見ず知らず&言葉が満足に通じない街に向かうことへの不安が増して来る。一番不安なのはデトロイトでの乗り換え。乗り損なったらどうしよう?! なんて考えてても仕方ないので出発。


 大阪駅から関空行きの快速に乗る。途中の駅で自分が乗っている車両が切り離されて別方向に向かうことを知って、別の車両に慌てて乗り換えたりして、前途多難の予感? とにもかくにも約1時間で到着。出発の3時間前だったので、僕が乗るノースウェスト航空のチェックインはまだ開始されてなかった。当然ながらカウンターには誰も並んでない。ふと見ると各種保険会社の旅行保険のカウンターがあちこちにあったのでパンフレットを見てみたら、僕のクレジットカードに付属している保険より支払い金額がずっと大きいことが分かったので、念のためと思って加入することにした。死亡保険金はどうでもいいけど、アメリカの医療費はメチャ高いって聞いてたので、病気になった時の保障は大きいほうがいいかなーと思って。
 ちなみに僕が加入したのはAIUの海外旅行傷害保険で、死亡・後遺障害3000万円、治療救援1500万円、賠償責任1億円、などなどという内容で、16日間で保険料は8500円。保障もだけど、緊急時にフリーコールで24時間日本語で対応してくれるっていうサービスもあるから、安心を買うつもりで。

 ・・・・てなわけで一安心(?)して振り返るとカウンター前に10人ほどの列ができてた。まだ2時間半以上あるよ?でもほかにすることがあるわけでもないから僕も並んで待つことにした。そのあと僕の後ろにはあっという間に長ーい列ができた。3時間前の空港到着は正解だったみたいだね。
 やがてチェックイン開始。カウンターで関空からデトロイトまでの便と、その後のラガーディア空港までの乗り継ぎ便の両方の搭乗券をもらって、荷物を預ける。荷物は安全確認のため開梱されることがあるってことだったから、鍵をかけるのはやめにした。壊されたら困るし。で、カウンターのお姉さんが搭乗開始の時間を教えてくれたから、それまでまだかなり時間があるし何してようかなーと椅子に座ってボンヤリしてたけど、よく考えたら出国審査まだ受けて無いじゃん!
 で、出国審査へ。ここもまだ他に人がいなくて、時間早いけど受け付けてくれんの?って係員の人に聞いたらハイどうぞ、って言われて通されたところで機内持ち込み荷物のチェック。でもX線と金属探知機で見るだけでカバンを開けもしないんだね。ずいぶん簡単なんだなー。
 それから搭乗開始までは、トイレに行ったり免税店をひやかしたり。あと小腹が減ったので売店でキツネうどんを食べたけど、これが大変にマズかった! でもなぜか揚げが二枚入っているのはせめてもの償い?


 そんで時間が来たので搭乗開始。英語のアナウンスがいろいろ喋ってるけど、細かいことは聞き取れなくて、こんな調子じゃあ向こうに着いてから困るなあってビビってたら、その後流れた日本語のアナウンスもやっぱり聞き取れなかった。なんせ速すぎるんだもん、喋りが。さっきの英語もネイティブの人がどの程度聞き取ってるのか疑問。
 なんとか聞き取れた範囲の英語と日本語から察するに、この便はノースウェスト航空とコンチネンタル航空の共同運航便なんだって。飛行機はノースウェストなんだけどね。一昨年の同時多発テロやら今年のSARSやらで旅客数が減っているだろうから、こんな風に便数を減らして効率化を図ってるのかなあ。そのせいか、旅行シーズンでもないのにどうやら満席みたい。
 僕の席は3列席の真ん中。窓側はミシガン州の大学に留学中で一時帰国してたっていう若いギャル男系兄ちゃん。通路側はデトロイトに住んでいる娘に会いに行く(5回目)というお婆ちゃん。この時点で機内ロマンスの希望は儚くも消え、でもまあ二人とも海外旅行経験者だから色々聞くことができて良かった。んーで、この後の12時間は特に記すべきこともなし。何回か寝たり起きたり、機内食(まぁまぁかしら)食べたり飲んだりトイレ行ったり・・・・とにかく疲れたぁ。本を読むことも、しまいにゃ寝ようとして目を閉じてることすら疲れる感じ。上映されてた映画もなんかツマンナかったし。おまけに席がちょうど翼の横あたりなもんで窓からの景色もほとんど見えなかった。僕は電車に乗ってても景色さえ見えればかなりの長時間でも苦痛なく座っていられる方だから、飛行機でも地上の景色が見えれば少しはしのぎやすいはずなんだけどなー。

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 この間に日本的には日付が変わるわけだけど、今後の日記をアメリカ日付で書く都合上、このまま23日分として続けまーす。だからこの枠は実質二日分ってことだね。


 ときおり飛行機が進路を変更するために機体を傾けるので、窓から地上が見えることがある。どこだかわかんないけど、カナダからアメリカ中西部にかけての平原みたい。四角く区切られた畑らしきものと、沢山の池や湖も見える。その次に見えたのは大きな湖。デトロイトがかなり近いはずだから、ミシガン湖エリー湖だろうな。そして飛行機は時間通りにデトロイトのメトロポリタン空港に到着。エミネムの『8マイルズ』みたいに荒れて怖い街ってイメージがあるけど、空から見る限りではそんなのはよく分かんなかったなあ。たまたまかも知れないけど、窓から見える限りでは、緑の多い住宅地が広がっているだけ。
 空港も大きくて近代的な感じ・・・・まだ新しいのかな? けど、建物の内部は外からの光があまり入ってこないから巨大な地下鉄の駅みたいだし、その暗めの建物内に太いメタリックの柱がズラーっと並んでる様子は、「ロボコップ」とか「ターミネーター」をイメージさせるようなイカツい感じ。


 さて、この空港で入国審査を受けて、いったん預けた荷物を受け取り、それをまた再び預けて乗り継ぎの飛行機に乗らないといけないんだけど、これが一番の難関だった。
 まず入国審査。何せ乗ってたのがジャンボ機で満員の乗客。それが搭乗の時と違って一斉に審査を受けるものだから、いくら沢山のゲートがあってもなかなか進まない。アメリカ国民だと早いんだけど。僕は臨席のお婆ちゃんとギャル兄ちゃんと話しながら移動してたら遅くなって、列の最後尾付近になっちゃった。それでも審査の英語そのものは(こっちが日本人だからか)難しくなかったから助かった。聞かれたのは旅行の目的と、滞在先。ところで滞在先が「友達の家」って言ったら「boy or girl?」って聞かれたのはなんでだろー?
 それはともかく、バゲージ・クレームで荷物を受け取って、ここで臨席のおばあちゃんとはサヨウナラ。僕とギャル兄ちゃんは乗り継ぎなので、再度荷物を預けて持ち込み荷物のチェックを受けてそれぞれの便の搭乗ゲートへ。で、その荷物預けとチェックの時に、日本と違って係員さんはあまり愛想が良くないし、何せ喋ってる英語が早くて聞き取れない。ここでギャル兄ちゃんが助けてくれた。あー良かった。けどさー、ここからは本当に一人なんだよう。どうなるかしらん・・・・。


 ギャル兄ちゃんと別れて僕はNYC行きの飛行機に。2時間の乗り換え時間があったんだけど入国審査で時間食ったから結構ギリギリセーフ。今度はずっと小さい飛行機で、搭乗の時も搭乗券を見せるだけでチギりもしないのね。で、やっぱり満席。僕は一番後ろの3列席の通路側だったけど、隣のインド系の夫婦が「離れて一人で座っている私たちの子供と席を替わって下さい」と言うので(客室乗務員を通じての申し出。インド系夫婦の英語はよく分からんかったなあ。乗務員の言うことは分かったからよしとするかあ)、エコノミーの最前列の2列席の窓側に移動。お隣は70歳はとうに過ぎてるんじゃないかと思われる白髪のお婆ちゃん。あぁまたしてもロマンスの神様は意地悪ね(^_^;
 ニューヨークのラガーディア空港までは2時間。乗っている間はこれまた特に何事も無かった。婆ちゃんが乗務員に飲み物やらお菓子やら次々と要求しまくったこと以外は(笑)確かにね、飲み物なんかのサービスはいくらでもリクエストしていいって聞いてはいるんだけどね、僕にはなかなかできない小市民。


 そしてやっと! 日本を発つこと16時間、ニューヨークのラガーディア空港に到着。(でもアナウンスとかは「ルゴーディア」って感じで発音してた)。荷物受け取りのゲートのところには到着客を待ち受ける、名前を書いた紙を手に持った人たちが沢山。飛行機の中と違って空港内で見かけるのは大半が黒人かヒスパニック系な感じの人たち。なんだか雰囲気が違う・・・・と思ってしまう自分の中にある人種差別を再確認した感じ。それから黒い帽子を被って長い髭を生やした、いかにもユダヤ人なオッサンを見ると「ああ(映画で見たのと同じ)ニューヨークだわ」って気がする。
 さて、昨日のメールではTが迎えに来てくれてる手筈になってたけど、荷物受け取りのゲートんところで待ってればいい筈が30分待っても姿が見えない。いま渋滞の時間(午後6時頃)だし、遅れてんのかな? それとも急遽変更があったのかな? 一応携帯に電話を入れてみることにする。で、ドルは持ってるけど札だけだから、売店でテレカを買おうとしたら売ってないって言われて、困った顔をしたら「じゃあ両替してあげる」って。この店員さんすんごい親切なんじゃない??とにかく助かった。と同時に携帯電話を持ってこなかったのを悔やんだ。当たり前だけど、日本と一緒でそこらじゅうでみんな携帯で話してるもん。安いレンタルが日本で手配できるもんな、またの機会にはぜひ使おう。
 替えてもらったクォーター(25セント)を2ドル分握り締めて公衆電話へ。で、つながった!ホッ! 電話に出たのはHみたい。相手の喋っていることが全部わかる訳じゃないけど、とにかく向かってきていることは確かみたいなので、「じゃ待ってるからー」と言って電話を切った。


 んで、ついに Hが登場。けど、なんか感じが違う・・・・少し太った(顔が)? チャット担当はTのことが多くてHをカメラで見ることはあまりないから、数年前の写真のイメージで考えてた。ともかく、知り合って一年ちょっとにしてようやくの実物と会うっていうことに感激。と同時にずーっとバーチャルな存在だった人が現実に目の前に現れて、その人と抱き合うことの不思議。話をしながら(なんとか通じてる!)車まで歩いて行って、助手席に乗って、運転席のTとハグハグ。Tはどう考えても仕事の後でバッチリ着替えて来たなっていう、アラブの人みたいな白いゆったりしたシャツとパンツ、帽子という格好。それでサングラスかけてビーズのネックレスを幾重にもかけてるから、ブラックモスレムの人みたいでもあり一風変わったギャングスターのようでもあり。でも似合ってるなあ。車はビュイックのホーネット(たしか)っていう「いかにも」なアメ車。外観も内装もレトロな感じでカッコいい。


 ラガーディア空港はクイーンズ地区にあって(あやふや)、そこから名前は分かんないけど橋を渡ってマンハッタン島に入るとそこはもうハーレム。二人のアパートメントはその中でもイースト・ハーレムって呼ばれるところにある。別名スパニッシュ・ハーレムとも呼ばれる通り、住民のマジョリティはヒスパニック系なんだってHが教えてくれた。高いビルはあまりなくて、古ーいレンガ造りっぽいビルがずらっと並んでるところは『ウェストサイド物語』みたい。広い通りの両脇にはズラーっと路駐の車が。で、なんだか街の雰囲気怖いぞー。アパートメントの建物やその周辺の写真は以前に見せてもらったことがあってたしかにその通りだけども、写真ではわかんなかった「人々」がやたら大勢いる。歩道の上に大人や子供が所在なげに大勢たむろしてて、突然大声で怒鳴る人がいるからビビって振り返ると単に大声で話しているだけだったり(苦笑) 夕方とは言え緯度が高い上にサマータイムで、まだまだ日が高くて暑いからみんな屋外に涼みに出てるらしい。


 いったんアパートに入ってシャワーを浴びて、それから夕暮れの(午後9時前)アッパー・マンハッタンをぐるーりとドライブ。一足先にこっちに到着してるGちゃんが行ってるコロンビア大学のあるモーニングサイド・ハイツを横切ると真正面に綺麗な夕陽が見えた。それにしてもあれやね、歩行者って信号全然守らないのね。もちろん信号機の無いところはバンバン渡ってくるし。道の両側はほとんどどこも駐車してる車でいっぱいだから、その影からいつ人が出てくるかわかんない。トロイも狭い道を通るときはひっきりなしにクラクションを鳴らして走る。前や横の車の突然の針路変更は言うべきにもあらず。国際免許は持ってきたけど、僕は絶対この街じゃ運転できなーい!


 で、途中でTの母ちゃんのアパートメントに寄る。ハーレムの真ん中あたりになるのかな? イースト・ハーレムよりはもう少し落ち着いた感じで、ビルもイースト・ハーレムより新しくて高い建物が多い。母ちゃんのアパートメントは一応管理人さんがいて、黒人のしかも年配の人を多く見かけた。母ちゃんは以前に写真を見せてもらったことがあるけれども、着る物のセンスが大変よろしい(と僕は思う)、いかにも60〜70年代のヒッピーな文化を体験してきた人って感じ。部屋のインテリアもすごく趣味がいい。息子たち(母ちゃんはHのことを「私のお気に入りの息子」と呼んでキスしてた)の部屋はアジア&無国籍な感じで色んな物が所狭しと置いてあるのに対して、母ちゃんの部屋はずっとシンプルでアールヌーボーな感じ。母ちゃんの英語はかなりディープな発音で喋らはるからどうにも聞き取りにくいのがちょっと困った。僕に判る範囲での会話内容としては、僕は母ちゃんの元夫にソックリだって。実は母ちゃんはTの父ちゃんと結婚する前に日系2世の人と結婚してて、今でもその元夫の日本の姓を名乗ってる。元夫のKさんは2年前に亡くなったんだって。残念・・・・会ってみたかったなあ。
 アイスティーを飲みながら、そのKさんと、他の家族の写真を見せてもらった。Kさんは僕に似てるとも思えなかった。メガネが似てるだけなんちゃう? 


 それからT&Hのアパートに帰って、冷凍パスタ(ペローギ)とミートソースで夕食にして、それからリビングに(テレビショッピングでお馴染みの)エアロベッドを出して僕の寝る場所を作って、みんなでテレビ見て、それから軽ぅくスキンシップして(内容はご想像におまかせします)、生まれて初めてラッシュというものを試してみたんだけども、首から顔にかけてちょっと火照ったこと以外は特に変化もなし。損な体質。
 その後は疲れからかすぐに眠りに就いた。長い長い一日の終わり。