「状況」汚染広まる

 若者言葉の乱れは何かというと話題になりますが、何年か前から私が気になっているのは大人の、しかもアナウンサーやレポーターといったいわば「言葉のプロ」な人たちの間に広まっている、「状況」の氾濫です。
 最初はワイドショーのレポーターでした。「・・・です」とか「・・・しています」と言い切ってしまえば良いところを、「・・・という状況です」とわざわざ「状況」を付け足して話す人が多いことに気づいたんです。たとえば「現場は集まった野次馬や報道陣で騒然としています」と言えばいいところを、「騒然としている状況です」というように。
 これは例のコンビニ敬語(「〜でよろしかったですか」「〜の方」)とかと同じで、なんとか丁寧な感じを出そうとしての苦し紛れの「付け足し丁寧語」の一種なのではないかと思います。でも「伝えること」を職業でやっている人ならば、そうした付け足し語ではなくてボキャブラリーで対応して欲しいと思いますね。
 で、すでに書いたように最初はワイドショーのレポーターによく見られる現象だったので私は「ワイドショー用語」と名づけていましたが、そのうちにワイドショーだけでなく、プロという意味ではもっと専門職であるはずの一般の報道(アナウンサーや記者)でも使われるのを聞くようになってきました。「伝えること」のプロの間にこの「状況汚染」がどんどん広まっている状況です(←汚染一例)。特に事故や災害の現場からのレポートで使われることが多いので、こんど機会があったら耳をそばだててみて下さい。