私の性的指向

 pabloxさんところのブログ性的指向について書いてあって、それにコメントした内容についてここでも書いてみます。

 私はいわゆる「ゲイ」と呼ばれる人ですし、よくそのように自称もします。その理由は、主に以下の2つの点に拠っています。
 1.私の性自認が「男性」であること。
 2.私の欲情の対象が(一般に)「男性」に分類される人であること。


 このうち、「性的指向」は2.に関係する事柄ですね。
 昔はこんなことは当たり前だと思っていて、特にそれについて疑問を持ったりことさら考えてみたりもしませんでした。それをあらためて考えるきっかけになったのが、バイセクシュアルの友人(id:maki-ryu)との出会いです。彼女はバイセクシュアルというよりむしろ「太っている人が好き」という性的指向を持っている人で*1、しかも太っていることが性別よりも重要な人なのです。その結果、好きになる相手が女性だったり男性だったりするというわけです。バイセクシュアルの人の中には「男性は男性として、女性は女性として好き(欲情する)」という人ももちろんいるのですが、彼女の場合はそういうケースとは明らかに違います。
 それまで私は、性的指向というのは「女性か、男性か、両方か」という区別しかないと思っていました。だから「性別」以上に重要な「性的指向」があるというのはまさに目から鱗で、と同時にとても理屈に合った話だなとも思いました。性的指向を性別だけを根拠に考えてしまうと、たとえば「ジャニーズ好き」な男性と「オヤジ好き」な私とが同じ性的指向の持ち主(同性愛)に分類されてしまうことになりますが、私はそのことに常々違和感を持っていたからです。「性別」を切り口としない性的指向はあっていいはずだし、さらに「性別」が常に性的指向を考える上での最優先事項じゃなくてもいいはずです。そう考えると、maki-ryuの存在はとても腑に落ちるものでした。


 そこで次に、私自身の「性的指向」を性別以外の視点から見直すという作業をしてみました。それまで私は自分は「男性」に欲情すると思っていたわけですが、ではその「男性」とは一体なにものなのか? 性別以外の言葉で説明することはできないものか? という問い直しです。
 たとえば私の好む「体つき」というものがあります。私の好む「顔つき」というものもあります。私の好む声や、手や、話し方やしぐさもあります。セックスのときにどういうあえぎ方をするか、というのもそうです。(それぞれを具体的に言葉で説明するのは大変なので割愛。)それぞれの重要度はまちまちですが、私の「性的指向」はそういった様々な要素の集合体として存在していると言えます。
 そして、そうした私の「性的指向の諸要素」の大部分は、いわゆる「男性」的なものとして一般に考えられていることと一致しています。私の性的指向が「男性」である、と言ってしまってもほとんど不具合を生じないのはそのためです。
 でも、私の「性的指向の諸要素」のすべてが「男性」的なものというわけではないことに、私は気づきました。その一番分かりやすい例は、「私は相手の(外)性器に関しては、女性器であっても男性器であってもかまわない」ということです。顔や体つきからして「イケる!」と思った相手がいて、その人とめでたくベッドインという機会に恵まれ、胸躍らせながら相手のパンツを脱がしてみたらチンコじゃなくてマンコがついていた・・・ということになったとしたら、多分はじめはビックリはすると思いますが、それでも私はその人とセックスできる・したいのです。*2


 「そんなこと言ったって、身体が男で性器だけ女なんて人がいるものか」と思っているあなた。世間は広いのです。「シーメール」という、チンコ持ちの「女性」だっているのですから*3、その逆バージョンだっていらっしゃるのです。実際、私がかつてとあるトランスジェンダーの人たちの交流会のお手伝いをしたとき、会場にはカッコいいFtMアニキやオヤジ達がいらっしゃってて、私は「イケるわ〜」と思ったものです。そのアニキやオヤジ達がSRS*4をまだ済ませていないのであれば、彼らはまさに「マンコ持ちの『男性』」ということになります*5


 話が横道にそれました。要するに、私の性的指向をより正確に言うと、「(外)性器については『男性』寄りのバイセクシュアル。その他の点についてはほぼ『男性』」ということになります。でもこんなこと言っても一般には通じないし、それについていちいち説明するのも面倒くさいので、通常は「私の性的指向は『男性』*6です」とか「私はゲイです」と言ってしまうわけなのですけれども、ほんとのところはちょっと違うんですよ。覚えておいて下さいね。(なんのために?)

*1:これについては本人も公言しているので、アウティング行為ではありません。念のため。

*2:ただ、「この人にチンコがなくてちょっと寂しい」という気持ちはあると思います。逆に、チンコ持ちの人に対して「この人にマンコがなくて寂しい」という気持ちは湧かないだろうと思うので、重要度から言えばチンコの方が上回っていると言えます。

*3:シーメールもののポルノが存在するところをみると、チンコ持ち「女性」が好きな人ってそれなりにいるんですね。

*4:性別再判定手術。いわゆる外性器の性転換手術のこと。

*5:そうした男性は、セックスの際に自分のマンコを使うことを嫌う(あるいは見られるのも嫌とか)可能性も高いので、私との性器を使ったセックスに応じてもらえるかどうかという問題は残ります。あと、FtMの人がセックスの相手として男性を選ぶ可能性がどの程度あるかという問題もあります。でも、男性とセックスする(したい)FtM(「FtMゲイ」といいますが)って私の知る限りでも4名いらっしゃるので、ものすごく珍しいというわけでもないようです。

*6:この場合も「男性」はあくまでカッコ付きで。いくら男性だって、若い(30歳以下)とか逆に熟年とか痩せてる人とかすごく太っている人などなど、私の欲情の対象にならない人はたくさんいるわけですから。