⑩ WIGSTOCK: THE MOVIE

shigeri2004-10-14

 出演:ルポール、アレクシス・アークエット、クリスタル・ウォーターズ、ディー・ライトほか
 監督:バリー・シルズ
 1995年 アメリカ(R指定


『人間には二種類しかいない。ドラァグを楽しむヤツか、そうでないかだ。』(しげり)


 「ウィッグストック」は、かつてニューヨークで毎年開催されていたドラァグ・クィーン達による巨大野外イベントです*1。もちろん「ウッドストック」のもじりですが、直訳すれば「カツラの山」。ドラァグのイベントにこれほどぴったりのネーミングが他にありえるでしょうか。この映画は1993年と1994年の「ウィッグストック」を記録したもので、屋外ステージでのドラァグ(だけじゃないけど)のパフォーマンスや観客の様子、パフォーマーや観客へのインタビューから構成されています。
 そしてこの映画の素晴らしさはそのパフォーマンスもさることながら、むしろ合間に巧みに織り交ぜられたインタビューの部分にあるとも言えます。出演者はかなり政治的な発言もしていますし、実に様々な人たち(セクシュアリティだけに限った話ではなく色々な意味で多様な)が登場していますので、見るたびに毎回新しい発見があります。最初に買ったのはVHS版でしたが、その後DVD版で買いなおして字幕つきで見たらこの映画の面白さがますます深まりました。日本では発売されていないようなのが残念です。
 この映画に込められた「愛」と「自由」のメッセージは、「ウィッグストック」がほかならぬ「ウッドストック」のまさに正統な後継者であるこことを証明しています。

 ああ、でも、本当はそんなことどーでもいいんです。とにかくこの映画は見るたびに私を幸せにしてくれるのですよ。そして最後に「You got the right to be free」の歌が流れてくるといつも泣けてきます。こんな当たり前の歌詞が胸に響くということは、やっぱり私は自分の「自由」がどこかで阻害されていると感じているんでしょう。*2そんな私の窮屈さがいつか消えるときが来るのだろうかという思いと、映画の中に見る人々の楽しそうな顔が重なって、自然と涙が出てくるのだと思います。


 ところで、ドラァグはゲイ・カルチャーと切り離しては語れませんが、でもすべてのゲイがドラァグを(「する」ことどころか「見る」ことすら)受け入れているわけではありません。特にいまのこの時代、ネットの普及で「普通の人」がゲイ・カルチャーの洗礼を受けないままに「普通のゲイ」に横滑りしていくことが多いなか、明らかに「普通じゃない」存在のドラァグ・クイーンを受け入れがたいと感じるゲイ(やMtFトランスジェンダートランスセクシュアル)はむしろ増えているのかも知れません。そんな中にあってドラァグの楽しみを知ることができた私は、本当に幸せだと思います。
 そんなこと言ってたら久しぶりに女装したくなってきたなぁ。実家に戻るときに衣装や化粧道具を処分したのがちょっと悔やまれます。特に10cmのヒールのゴールドのサンダル。私の足はそんなにデカい方ではなのですけど、それでも26.5cmあるので既成の婦人靴ではなかなか入らないんですよねえ。もしこんど女装する機会があったら、今度は目の細い東洋風のメイクにしてみたいです。もっとも私の化粧の技術ではやっぱり汚れ系女装になっちゃうのがオチでしょうけどね。

*1:何年か前に終わっちゃったらしいです。残念。一回は観に行きたかったです。

*2:「『自由』の意味を履き違えるな。他人に迷惑をかけなければ何をやってもいいと思っているのか!」とか言う阿呆が世の中まだまだ沢山いますから。