「子どもが減って何が悪いか!」(赤川学・著)
ひさしぶりにスリリングな本を読んだというのが素直な感想です。著者の赤川さん(信州大学助教授)はセクシュアリティの歴史社会学やジェンダー論が専門なので、書店でこの本を見かけたときは「おや?今回はまた変わったテーマで書いたんだなぁ」と不思議に思って手に取りました。
「男女共同参画社会」と「少子化(対策)」を直結して語られることが多い昨今ですが、この本はその二つの関係を見事にバッサリ切って捨ててます。著者は社会『学者』という立場から様々な統計データの意味を丁寧に解きほぐしていき、その結果「女性の社会進出が進んでいる社会=子供を生み育てやすい社会」というのが実は恣意的な統計データ操作による「盲信」に過ぎないことを明らかにしています。つまり、「男女共同参画」が進んだからと言って今の日本の「少子化」傾向は止めることができない、という結論です。
しかし著者はだからといって「男女共同参画」に反対しているわけでは決してありません。少子化対策として有効であろうとなかろうと、「男女共同参画社会」を目指すのならそのための施策を進めるべきであると言い切っています。その一方で、止めることのできない少子化であるのだから、日本は確実に少子化・高齢化社会になっていくことを前提に社会基盤を作り上げていくべき(たとえば年金政策の修正とか)だと言っています。
私自身、実は昔から「少子化対策」=「男女共同参画社会」というカップリングに何とも言えない胡散臭さを感じていたので、この本を読んだときは「そういうことだったんだ!」というすがすがしさ(という用語は変かしら?)を感じました。
でもこの本が出て困る人は沢山いるでしょうね。特に行政関係での「男女共同参画」は少子化対策抜きに語ることができないんじゃないかというほど強い結びつきがあるようですから、もしかすると強い反発が起きることも予想されます。それを見越した上でこの本を執筆した著者の「学者としてのマットウさ」に拍手。
- 作者: 赤川学
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/12
- メディア: 新書
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■補足:この本のもっと詳しい要約は http://d.hatena.ne.jp/sinngetu/20050116 で読むことができます。(勝手にトラバしちゃいました。ご容赦下さい。)
■補足その2:この本についての赤川さんへのインタビューはこちら⇒ http://media.excite.co.jp/book/interview/200501/index.html